About

静寂と言葉の間に

ECCE(エチェ)は、学芸と工芸の交差点に立ち、16世紀イタリアに現れた伝統技法・素材であるスカリオラを用いて神話・哲学・文学に触発されたアーティファクトを制作するブランドです。

 

スカリオラとは何か

スカリオラ(scagliola)は、16世紀イタリアに現れた人造石材です。石膏・膠・顔料などを中心に混錬し形成したのち、乾燥・研磨などの複雑な工程を経て、「暖かい大理石」といえる仕上がりを得ることができます。

主に室内装飾・家具天板・柱や壁面装飾に用いられ、象嵌細工もまたスカリオラと呼ばれました。19世紀のウィーンでは、スカリオラによる卓上や内装の芸術的価値が高く評価され、大理石を超える価値が与えられた事例も確認されています。

一部の地域では具象的な像や胸像、彫刻的装飾にも用いられましたが、素材の脆弱性や加工難度の高さから普及は限定的であり、特に立体造形技法は失われたままでした。現代においては、スカリオラ技法は一部の工房により継承されているものの、具象像に特化した技法の復元と応用は極めて稀であり、未開拓の分野といえるでしょう。

 

ECCEの取り組み

ECCEでは、歴史的資料・技法書・保存物の分析をもとに、スカリオラ技法による具象像制作を博物学的かつ文献学的に復元。素材の再調合から成形・彫刻・彩色・研磨に至るまでの一貫工程を確立し、「温かい大理石」としてのスカリオラ像を現代に甦らせています。

ECCEの作品は、単なる模倣ではなく、神話・哲学・文学の象徴世界を造形として表現するという新たな芸術的アプローチに基づいています。

 

制作思想について

ECCEにおける制作とは、素材と理念、過去と現在が交差する場において、
沈黙のうちに語るかたちを呼び出す行為です。

使用するスカリオラは、16世紀という比較的新しい人造石材でありながら、
その内部には時間、知、手技、そして象徴の層が折り重なっています。
それは単に「模倣された石」ではなく、語りを内包した物質=理念の媒体と捉えることができます。

ECCEの作品は、神話や哲学、詩や文学に含まれる記憶の断片を出発点とし、
視覚的な造形として再構成された「語りかけるアーティファクト」です。

「美しいもの」を作ることを目的とはせず、
知のかたち・思索の媒体・象徴の実在性をめぐる探究として制作を位置づけています。

 

制作者について

丸山顕誠(まるやま あきよし)
博士/デジタルハリウッド大学・日本女子大学 講師

専門:宗教的神話的態度、日本神話、神道祭祀。
大学では「世界の神話」の講義を担当している。神道学・現象学・神学・神話学の知見を軸に研究を行っている。

現在は日本女子大学およびデジタルハリウッド大学にて「世界の神話」などの講義を担当し、
学術研究と制作実践を横断するかたちで、素材知と叙述の現在的統合を試みている。

とりわけ、ヨーロッパでも記録の少ないスカリオラによる具象像制作技法の復元に取り組み、
16〜19世紀の技法書・文献・保存物の比較分析に基づいて、独自の素材配合・彫刻・研磨工程を確立。
神話・哲学・文学の象徴世界を、語りかけるアーティファクトとして現代に蘇らせている。

著書に『神話を読んでわかること』(原書房)、『神話研究の最先端 第2集』(笠間書院・共編著)、などがある。

研究業績の詳細はresearchmapにて公開している。