スカリオラとは
手仕事による石
伝統が形作る、もうひとつの石材芸術
スカリオラ(Scagliola)は、16世紀後半にイタリアにあらわれた装飾技法で、17世紀にはトスカーナやエミリア地方を中心に広く用いられるようになりました。
焼成石膏に顔料と膠(にかわ)を練り込み、磨き上げることで、大理石や貴石を思わせる質感と模様を表現します。
語源はイタリア語の scaglia(鱗・貝殻)に由来し、光と鉱物に対する美的関心と職人技術が融合した素材です。
素材と技法
一塊ごとに練り、彫り、磨き出す
この技法は、焼成した石膏と膠を混ぜて柔らかな素材を作り、そこに顔料を練り込んで成形し、硬化させ、研磨を行います。
様々な工程を重ねることで、素材自体が持つ穏やかな光沢と、石材とは異なる柔らかな質感が徐々に現れてきます。
現代においてスカリオラは、主に平面装飾や建築要素に用いられていますが、ECCEではこの技法を立体造形へと展開し、彫像やレリーフとして再構成しています。
歴史と伝統の継承
信仰と美を支えてきた装飾技法の系譜
スカリオラは、17世紀のイタリアにおいて、教会や神殿、貴族の邸宅などを彩る装飾技法として発展しました。
その背景には、古代オリエントの石膏技術、ギリシア・ローマの建築装飾、イスラム世界のスタッコ技法といった、長い装飾文化の系譜が存在します。
スカリオラはそうした伝統の上に成立し、石膏と色彩の技によって、美と信仰の空間を支えてきた職人たちの技術が磨き上げてきたものです。
また近年では、16世紀末のドイツ・バイエルン地方において類似の技法が既に成立していた可能性も指摘されており、ヨーロッパ各地の職人文化の交流によって育まれた多元的な技法とも言えるでしょう。
ECCEの挑戦
素材を語る像──「記憶と象徴の再構成」
ECCEではこの失われつつある技法を、神話や哲学、文学に登場する象徴や人物像をかたちにするための手段として再構成しています。
素材の練成から最終研磨まで、すべての工程を手作業で行い、素材の中に象徴を埋め込むようにして彫像が生まれます。
それは、過去と現在、素材と意味、沈黙と語りのあいだに立ち現れる、静かなかたちです。
見る者の中に、記憶や物語がそっと立ち上がることを願って制作しています。
傍らに置かれるための像
ECCEの作品は、目立つためではなく、ふと目が合ったときに語りかけてくるような存在です。
素材の記憶、制作の手跡、象徴の力が、日常の中に小さな静寂と思索の時間をもたらすことを願っています。
「かたち」そのものが語る──そんな存在を、あなたの傍らに。